これが、夢ならどんなにいいか。
…そう思いたい。
「何故此処に…」
「決まってるじゃない。
兄さんの、最後を見届けにきたのさ」
言われているのはあたしじゃないのに、まるで胸にナイフを突き刺されたように、胸がズキン、と傷んだ。
「母上を殺した狐の、最後を見るためさ」
その、冷たい言葉にあたしは身震いする。
……ありえない…。
…兄弟なのに……。
「残念ですが……」
あたしがまた無限ループに入りかけた時、そんな声が引き留めてくれた。
「私はまだ、消えるわけにはありません」
「そんな姿でよく言うよ。
…母上を、…守れなかったヤツが…!」
…耳を塞ぎたい。
あたしにはわかり得ない過去が、二人にはある。
あたしが、入る隙なんて…
本当はないのかもしれない。


