うーん、と考える。
『…他に行くところないんだよね?』
『はい』
『…じゃあ…、狭いけど…ウチにくる?』
そう言った瞬間の、彼の瞳の輝きようといったら…。
『…、よろしいのですか…っ』
『……狭いのでよければ…』
『…ありがとうございます…っ』
別に、警戒するほど悪い人ではなさそうだし…
──とかいう理由で、ウチにいれたんだった。
…今思うと、あたしってかなりのバカなんじゃないか。
こんな、誰かもわからない人を家に入れるなんて…
ああ…、と再び額に手をあてた。
すると。
「千秋さま、朝食のご用意ができております」
スッ、と立ち上がり、胸の前に手を当てながら言う。
え?と思い、急いで布団から出てテーブルに向かうと。
そこには、きちんとした朝食が、すでに綺麗に並べられていた。
「これ…、狐燈さんが作ったの?」
「私に〈さん〉など不要ですよ。
とりあえず、千秋さまの好みが
わからなかったので簡単ですが…」
そう言ってニッコリ、とあたしに笑いかける。
いや、あたしだって、こんな完璧になんて出来ない。
とりあえず感動するのは後回しにして、急いで朝食をとり、支度を済まして家を出た。