それからゆっくりと、話し始めた。





「…あいつの元主は、東条春樹という一人の男だった────…」






……やっぱり…。


東条春樹は、祖父の名前。



あたしの母親が、元東条の人だから。


でも今はもう、縁は切ったらしいけど。






そして、その人は唯一…

あたしの、味方でいてくれた人───。





「あいつは以前、東条にも助けられていたんだ」




……助けられていた…?





「妖狐は、昔から意味嫌われるもの…。
あいつは妖狐だけに、他の妖怪からも嫌悪され続けた。

そんな、孤独なあの狐を救ったのが、
東条という男だ」




実に変な男だった。



と、鬼野郎はケタケタ笑った。





「…と、昔話はここまでにしよう。
あとはあの狐から聞け。
俺はこの先は知らん。

とにかくあの女は、自分の立場を
利用したんだろうな」



「…それじゃあ…。
狐燈の言ってたことは…」



「おそらくは、あの女のなんかだろ」






…………。







…なんか、ってなんだ…