「いや、あたしなんかに〈さま〉なんて…」


「そういうわけにはいきません」




そういうわけってどういうわけよ…






「私は貴方の僕(しもべ)ですから」





そう言って、あたしの手を握りながら跪く。




…この人は、精神的に大丈夫なんだろうか…




そのうち捕まったりしないんだろうか……。





「どのようなことでもなんなりと、私にお申しつけください」





そんなあたしの心配をよそに胸の前で掌を当てて、会釈をしながら狐燈さんが言った。










――そんなこんなで、あたしの平和な平和な日常はこうもあっけなく終幕したのである。





さらば、日常。


ようこそ、非日常。