これから一緒にがんばっていこうね。
もっかい、改めまして家族をやっていこうね。
愚痴とか、聞くからな。
ひとりでためこまんといてな。
けど、ウチの愚痴も聞いてな。
とか言うて、ウチの愚痴ばっかりになってもたらごめんな。
…なぁ、おとうさん。
おとうさんの口が、野球ボールとおんなじくらいあんぐり開いてる。
まばたきを忘れてた瞳が、まばたきをした瞬間に…めっちゃ、うるんで。
「あ……あれ……」
あわてて目をそらすおとうさん。
下を向いたとき、ぼたり。
…せっかくのスーツのパンツに、斑点ができて。
「あれ?…うん、おかしいなぁ、なん……っ」
くしゃくしゃになるおとうさんの顔。
──景色が流れてく。
バイクの後ろにのっとる時よりもずうっと速いスピードで。
ウチとおとうさんを、どんどん遠くへと送りだす。
…いつか話した、いっちゃんの言葉がふいに浮かんだ。
『俺、結婚式泣いてまうもん。』