いっちゃんの声と一緒に改札の向こうから飛んできた、白いもの。
それはばっちりなコントロールでウチの手の中に着地して。
…それは、使いこんで古びた、野球ボールで。
でもただの、野球ボールやない。
黒い線が、白の上をいっぱい這っとる。
黒い、細い、カクカクした。
…角ばった、いっちゃんの字。
『離れても、ずっと一緒やからな。』
『これからもいっぱい笑おうな。』
『がんばれ。』
『おれも頑張るな。』
『みともに出会えてほんまよかった。』
『世界で一番だいすきやで。』
「みともっ!あんな!!──めっちゃ好きやで!!」
改札へだてた向こう側。
はずかしげもなく、おっきい声でそうさけんで、いっちゃんは笑う。
なぁ、知っとった?って。
そう言うて笑うねん。
…なあ、ウチも笑えてる?
めちゃめちゃ顔しわくちゃにして、笑えとるかなぁ。
…なあ、届いてる?
ウチの投げたボールは、そっちに届いとるかな。
見えへんけど。コントロールとか、全然自信ないけど。
でも、ひとつだけたしかなもの。



