ゆっくりお茶する時間もなく、立ち話だけで予約入れてた指定席の新幹線の時刻になる。
前もって買っとる切符は2枚。
おとうさんと、ウチの分。
…切符も、もうこれからは学割効かへんのやんなぁ。
だって学割つこうたら新幹線代2割引きやねんで。それっておっきい。
映画とかも、社会人の額になるねんなぁ。
学生証提示すること、なくなるんやんな。
…そんなんなら、もっと学生のうちにいっぱい観に行っとったらよかった。
家からわりと近くにある映画館あったのに。
いっちゃんとした映画館デートは、たったの1回だけ。
映画が始まった瞬間に手ぇつないで。
途中でしびれてって、どちらからともなく離して。
…最後の、クライマックスのシーンで、もっかいつないだ。
改札まで一緒に来てくれたいっちゃん。
だれからともなく、足を止める。
改札口の方を向いた、ブーツのつま先。
歩くんを止めたら、しょっとるカバンが急に重くなって。
指にはさんだ切符が急に、冷たいものに感じて。



