マンションの下に停められてる1台のバイクが、黒塗りの部分をテラテラ光らせてウチらを待ってた。
いっちゃんのバイク。
エンジンキーを回すと、ぶるん、て音を立てて目を覚ます。
ぶるん、ぶるん。
短い足上げて後ろに座ったら、ふとももに伝わる振動。
…この感覚もちょい久しぶりやなぁ。
寒い季節は、バイク乗ること少なくなるから。
「みとも、出発して大丈夫?」
「…うん、ええよ」
うん、と同時に、自分のヘルメットをいっちゃんのヘルメットにこつん、て。
ぶつけたら、ちょっといっちゃんが笑った気がした。
バイクが走り出す。
景色が動き出す。
…もうこれからしばらく、このバイクにのっけてもらうことないねんなぁ。
もう、この風景ともしばらくお別れなんやなぁ。
そう思ったら、おしりに密着する座席のカバーも、流れる景色も。
不思議やんな。
みんなみんな、すっごい大事で、まぶしく見えてくるねん。
…しばらく、触ることないねんなぁ。
いっちゃんの体温を、手のひらの下の感じながら思う。