「……」

「……」

「………」

「……なんか言えや」

「………」

「……オイ。恥ずかしいやんけ」

「……」

「……」

「……………っ、」



「…ははっ、…なんで泣いてんの」





いっちゃんの指が、ウチのほっぺたをすくう。


顔を見られたくなくて、ウチはぎゅっと唇をかんでうつむいた。



背中にくっついてくるおでこの温度が、あつい。


硬い髪の毛。しっかり筋肉のついた腕。



…いっちゃんは夏でも冬でも、いっつもカイロみたいにあったかいね。




みとも。



いっちゃんの声に、さらに涙腺がゆるむ。


のどにこみあげる熱いもの。


まるで体の奥になにかべつの生き物が生まれて、きゅうくつなウチの中身を全部押し上げてるみたいに。



…どうしようもないこの気持ちを、熱を、なんて呼べばええんやろう。




「…今、おれの中にある気持ち。…全部言うてええ?」



ごめんないっちゃん、返事、したいんやけどな。




…涙ばっかり出て、声が出ぇへん。




「今だけ、やから…こんなん言うの。」



やからかわりに、いっちゃんの胸元をきつくにぎる。



うん、ええよ。


なんでも聞くよ、いっちゃん。