…あ。


あー…あかん、なんか、



よけいに、寂しなってしもうた。




「…みとも。…ほんまに、心配せんでええからな」




さっきまでは女友達みたいに一緒にはしゃいどったのに。


今のおかあさんの声は…めっちゃ、大人の声で。



「………」

「アンタのことやから、おとうさん1人っきりにできへんし、おかあさんのことも気になるとか思ってくれとるんやろけど。…就職のことも、悩んでくれとったりするんかもしれんけど」

「………」


「…こっちには、いっちゃんがおるんやろ。」




お母さんの声が、ぽと、ぽと。



屋根からしたたるおっきな雨粒みたいに、心ん中に落ちていく。




「ゆうたやんか。あんなええ男、逃がしたらアカンでーって!」




お母さんは笑うのに、いっつもみたいに、よく知ってる顔で笑うのに。



ウチはちっとも、いつもの顔で笑えんくて。





…ぜんぜん、笑えんくって。











──なぁ、みとも。








おかあさんの、やさしい声が、降る。









「…アンタは、アンタの人生を生きたらええんよ。」