「…正直なぁ、」



うつむいたままのウチの頭に、いっちゃんの声が降って来た。



「俺な。自分が病気なっとるわけやないから、わからん。」


「……………」



…いっちゃんのセリフに、ちょっと心がツン、とした。


なんかいきなり、つき放された気分になって。



黙ってたら、いっちゃんが続けて話す。




「…やからな。ごめん、なんも言えへん。…簡単に、つらいやろなぁとか、言われへん。」




そう言って、くちびるを結ぶ。






…ああ。




ウチ、いっちゃんのこういうとこ、すきや。





簡単に、作りものの言葉を吐かんとこ。


自分の中にある、ホンモノの言葉でしゃべってくれるとこ。






「みとものおとうさん、俺実はけっこー好きやってんけど。」

「…なんかめっちゃ仲良かったよな。ふたり」

「あ、やいとった?」

「…別にっ!!なんで自分のおとうさんに妬かなアカンの!!」

「みともはヤキモチ妬きやからな〜」

「〜いっちゃんむかつく!!」



引っ張って手を放そうとするけど、逆にぎゅぎゅーって握りこまれた。