こくはく…って。
今まで全然、想像したこともなかった。
いっちゃんの彼女になって、それで、もうすっかりその場所で、安心してたっていうか。
こんなとこで、こんな話聞くなんて。
どうしよう。
どうしよう。
おにぎり、すぐそこにあるのに。
朝作ってったのに、
がんばって作って、やのに。
体の奥がずーんてなって。どうしようなんか。
「…………、」
べつに、10人並の顔やって、ちゃんとわかっとるし。
びっくりしたけど。
べつに、不安になるようなことじゃ、やのに。
後ろに身を引いたら、ウチについて来てたおとうさんにぶつかった。
振り返れへん。
こんな顔、見られたくない。
…おとうさんには、こんな話聞かれたくなかった。
なんで?なんでこんなことで。
おかしいんちゃうかな、
…あ。
「…………っ、」
やばい、泣きそう。
──ガサッ。
「……………!!」
出かけた涙が、思わず引っ込んだ。
おとうさんがウチを追い越して…水道場の向こうにおどり出てたから。



