やっとクーラーボックスの上に這い上がって来たおとうさんがポツリともらす。
…なんでちょっとうらやましそうなん、おとうさん。
たしかにいっちゃんは、男からも女からも人気者。
大学の教授のおじーちゃんから、バイト先のおばちゃんにまで熱烈にモテてる。
飲み会とか、いっつも中心になる人物や。
多分小学生の時とかな、ドッチボールで自分からボール取りにいく男子やったんやろな。
実際そう言ったら、
「みともは1番に当たるタイプよな」
…って笑われた。
むかつく、いっちゃん。
いっちゃんはいっつも一緒におって、近くにおって。
ふたりで、おって。
やからこうやって、フェンス越しのずっと向こうで、他の子らに「志波」って呼ばれてて。
ウチの知らん人らと笑いあってるいっちゃんは…なんかちょっと、ちゃう人みたいに見えた。
試合はどんどん進んで、あっという間に7回表。
太陽の位置も高くなって、白っぽかった光もギンギンと熱を持った高熱波に変わる。
試合は、3対3の同点。
いっちゃんたちのチームの方が明らかにヒット数は多いんやけど、なかなか点数にまで結びついてなかった。



