「なんかすごい人やなぁ…」
当日、おとうさんとふたりで試合会場のグラウンドに行ってみると、すでにすごい人だかりが。
…っていうか、人多すぎてグラウンド自体が見えません。
ソフトの試合って、こんなギャラリー多いもんやの…?
背伸びをしてみるけど、誰かよーわからん頭しか見えへん。
ヒールはいてきたらよかったかな。
けど高いヒールって苦手やから、絶対こけるしなぁ…。
小さくため息をついてたら、
「みとも。」
おとうさんが、なにやら言いたげにウチの肩をポンとたたいて。
…ごとん。
足元に、おっきいさびついたクーラーボックスをひとつ設置した。
「…………」
「これ、そこの体育館の前に転がっててん!」
俺、やったよ!的なものごっつい満ち足りた表情してるけどおとうさん、もしかしてこれ踏み台がわり?
…転がってたって。こんなおっきいもんいつの間に運んできててん。
釣り用やと思われるクーラーボックスに上ったら、初めてフェンスの向こうに目を向けることができた。
おとうさんも一緒に乗ってくる。
せまいせまい、落ちるって。



