「…もうええって」
「ええからっ!!な、おとうさん、何に見える?」
「え?野球ボールちゃうん」
「………。」
…なんで通じてんの、おとうさんには。
顔が入れ替わって、いっちゃんがニヤニヤしたり顔、ウチがすねた顔になる。
「…いっちゃんなぁ、ソフトのサークル入っとってん。最後の試合が明日にあるねんて」
「えっ!?そうなんか!?」
気を取り直して試合の話にうつる。
しゃーない、いっちゃんの晴れ舞台のためにちょっとはりきろうやないか。
「いっちゃん、明日おにぎり作ってこか?」
「お、ほんまに!?」
「うん。具何がええ?」
「え〜っとなぁ……ハンバグ!!」
……結構贅沢やな、いっちゃん。
っていうかおっきいな、いっちゃん。
「あの、おとうさんも…っ、」
「「え?」」
いっちゃんと、ウチと。
ふたり声を合わせて振り返ったら、めちゃめちゃ目を輝かせたおとうさんの姿があった。
「おとうさんも、見に行ってええかな?」



