先生は自分のヒジを曲げて、それと同時に肩もぐっと上げてみせた。
「…こんなふうにね。ヒジを曲げたいだけやのに、肩もついてきてしまうとか。」
おー。なんか、専門っぽい話や。
ポケットからメモを出して必死でとるけど、焦ってミミズみたいな字になる。
これ、あとから見て解読できるんかいな…。
言われたとおり、リハビリを見てたら。
蔵本さん、右手動かすの…めっちゃ、むずかしそうや。
なんていうか…誰かに変な方向から、むりやり押さえつけられてるみたい。
ウチの専攻は看護やからリハビリは専門に勉強してないし、教科書で軽く見た、程度やけど。
実際に患者さん見てみると、こんななんやなぁ…。
ぽたり。
蔵本さんの額から、汗が落ちる。
冷房効いとるし、暑いわけやないのに。
めっちゃきつそう。
右腕、ぶるぶるふるえとるもん。
「…あ。」
ぽたり。
ぼと。
汗と一緒に、蔵本さんの手のひらからお手玉が床に落ちた。
「おつかれさまでした!」
病室まで付き添って、ベッドに戻った蔵本さんにぺこり、頭を下げた。
…そうそう、血圧。
リハビリも終わったことやし、計らせてもらわな。



