目ぇキラキラさせて身を乗り出すおかあさんは、お母さんっていうより女友達みたいで。


「うまくいっとるよ〜。とくに変わりなく」

「え〜つまんな〜い!」



…娘の恋が波乱万丈の方がいいっていうんですかおかあさん。



いろんなこと話して、おとうさんに関するグチも聞いて、(家事ひとつもできへんとか、寝言がうるさいとか)いっちゃんの愚痴も言えっていうから考えたけどあんま浮かばんくて、またおかーさんに「つまらん」って言われて。


…いつの間にか、たっぷりあったミルクはなくなってた。



「ほなおかあさん、そろそろお風呂入ってこよかな。終わったらまた呼ぶな」

「うん」



よっこらせ、と立ち上がるおかあさん。


ウチの手からカップを受け取ると、ううん、と背伸びして振り返った。



「…みとも」

「ん?」

「来週から実習、がんばってきぃな」

「うん、あんがと」

「…就職は、向こうでするんやんね。」



向こう。


大学がある街。

いっちゃんが、おる街。



地元からふたつ県をまたいだ、遠い場所。