「片山さんと春増君。」

 聞きたくない言葉。

 桜の意識は吹っ飛んだ。

 流羽奈の母の顔だって、今何をしているのだってわからない。

「ちょっと、冬谷さん。」

 この言葉でやっと気付くぐらい。

 ふぁぁぁぁ!っとまるで遅刻しそうになると気付いた人のように、あわてている。

 少し落ち着いてから、

「これは事実じゃない。嘘だと思ったら、妹に聞け。」

 いやな暗い睨みつけ、桜はそのまま去る。


 一体いつもより寒い冬はいつあけるのやら。

 だれも知るはずがない。