よくよく思えば、海翔は桜をいじめている。

 そう、いじめている人に“ごめんね”なんて言うのか。

 まぁ、心の中で思う人もいるかもしれないが。

 だけど、海翔の行動はあまりにも軽率。
 なおかつ、桜の心を傷つけている。

 そんな人が本気で謝っているのか。


――本気じゃない。――

 無駄に抵抗していた右腕が止まった。

「海翔なんて、大嫌い。」

 その瞬間、右腕を時計回しに回し、海翔の手から離す。

 そのまま桜の家へ向かい始めた。

 一度も振り返ることなく。