美紫依は桜の思いを無視して、

「だって、うち、校門から一番遠い教室じゃん。海翔だって。

 それで、三回ぐらい遅刻しそうになったもん。」

 っと突っぱねた。


――嘘だ。――
 
 そんなはずがない。

 桜自身、五年生の時、美紫依や海翔と同じ教室を使っていた。

 桜の前の代の班長と、桜はほぼ同じ時間に出ている。

 それで、一回も遅刻寸前になったことはない。

 なのに、なぜ美紫依は遅刻しそうになったのか・・・


「桜は、みぃちゃんと同じ教室でも遅刻したこと、ないから。」

 弱々しい声となった。

 頭の中がごっちゃごっちゃ。


 いつの間にか、美紫依はいなくなった。

 
 そのことに気付いた途端、なんだか、よくわからない気持ちになった。

 道の中に一人ぽつん。

 桜は、孤立無援の状態になったっと思ってしまった。