桜は、美術室がある廊下の壁によりかかった。

 人気がなく、暗く、寒々しい。

 そんな中、桜は思いふけっていた。


――いつからなんだろう、この気持ち。

   私は、春増のことが好きなの?――

 不意に顔が赤くなった。

 冷たい手で冷まそうとしたが、赤みを取ることはできない。


――これは、恋、初恋よ。
   本当に“初恋”っと言いたい。

   なのに、私は恋した人を・・・間違えてしまった。――

 思わず、天井を見上げた。

 なぜ、天井を見上げるのか、理由は分からない。

 桜の顔が少しずつ変わっていく。

 恋とは別に、緊張しだす。その理由もわからない。

 手が震えだした。