時間ばかりが過ぎてゆく。

 一秒が一分に感じるぐらい、互いに時間の感覚が狂う。

 海翔は早く言いたい。
 桜は早くいってほしい。

 何かを。

 そう思っているだけで、時間が過ぎてゆく。

 春の生ぬるい風が、海翔を応援しているか、否かわからない。

 桜にとっては、それが怒りを増させる。


 もういい加減にしてほしい。

 そんな思いが桜の体中にいきわたる。

「これ以上、こんなことにつきあいたくない。」

 口がそれに反応した。

 口を火蓋に、あちこちが負けじと反応する。

 ぷいっと後ろに振り向き、一歩、二歩と踏み出す。