信号が変わって待ち合わせ場所へ走り出したとき、なんとなく異様な空気を感じて、振り返った。 俺が信号待ちをしていた辺りで子供が泣いていて、母親が何か叫んでいた。 あーあ転んだのかな、子供ってめんどくせぇ。 それくらいにしか思わなかったし、他にも人がいたから、必要ならば彼らが手を貸してくれるだろう。 そう思って、俺は待ち合わせ場所に急いだ。 ―…きっとその日のことに違いない。 …あのときの母親が…。