他にも客がいたのか。 「なぁんだ…」 どこにでもある、普通のバーじゃないか。 もっと怪しい雰囲気を想像していたが、ふたりのバーテンダーはやさしい笑みを絶やさず、余計な詮索をする様子もない。 怪しいどころか、むしろ安心感さえ与えてくれる。 「何かおっしゃいました?」 ことり、とブラッディマリーのグラスを置いて、女バーテンダーが言った。 「あ…いえ、独り言です」