「何になさいますか?」 「ブラッディマリーを」 「かしこまりました」 カウンターの女バーテンダーは、ゆっくりと言葉を発し、上品に微笑んだ。 彼女の向こうでは、背の高い男がシェーカーを振っている。 誰のカクテルだろうか…― カウンター席には、俺しか座っていない。 さりげなく後ろを振り向いてみると、いちばん奥のテーブル席に、ひとりの客が俺に背を向けて座っていた。 暗くて初めは気づかなかったが、ぼんやりしたシルエットを見る限り、どうやら女性のようだった。