いかにもな店名。



だけどこれ以上わかりやすい目印もないだろう。



親切といえなくもない。



あえて難点をあげるならば、午後9時という時間にも関わらず、扉にはほんの小さな明かりしか灯っていないことだ。



もっとも、それもわざとなのかもしれないが。



噂を聞きつけた人々が押しかけないよう、見つけにくくしてあるのかもしれない。



しばらくの間、扉の前を行ったり来たりしながら入ろうか迷っていると、路地に人の気配がした。



「…!」



俺は思わず、扉を押していた。