ちょうど通りかかったカフェに入ると、エアコンの暖気で眼鏡が曇った。 眼鏡を外してもたもたしているところへウェイトレスがやって来て、1人なのに4人用の大きなテーブル席に案内された。 客が来ない時間帯のようだ。 籐で編まれた軽い椅子を引いて腰かける。 脱いだコートは横の椅子の背もたれに掛けた。 コーヒーを注文し、ウェイトレスが去ったことを確かめて、鞄から通帳を取り出した。 目立たないよう、膝の上で開く。