朝10時。 通常なら開いているはずのないバーは、当たり前のように営業していた。 重厚な扉の中では、昨日と同じく、女性のバーテンダーが俺を迎えた。 ひとつ違うのは、女性の向こう、つまりカウンターの奥にもうひとり、バーテンダーがいたことだ。 扉を閉めると途端に薄暗くなり、今が朝だということを忘れさせる空気が店内に満ちている。 「お待ちしておりましたわ」 優雅に微笑むその瞳の奥に、俺は言い知れない色を見た。