引き下がらない彼女に、俺はもう1杯、オルヴァルをオーダーした。 「お気に召していただけましたのね」 「何とも表現し難い味わいが、忘れられそうにないです」 「甘くて苦い。まるで夢と現実…ですわね」 夢と現実。 それは、昨日の俺と今日の俺を表すのにもっともふさわしい言葉。 やっぱり俺は、この人に胸の内を見透かされているのだと思った。