ほんの数秒のことだったと思う。 「ねえ、行こ」 という、もうひとりの声に3人は俺に背を向け、表通りへと消えて行った。 「…ま、好みは人それぞれだからな」 強がりをわざわざ口に出して言うと、なおさら惨めな気持ちになる。 俺はため息をつきながら、彼女たちが出てきた店を見た。 藍色の、重そうな扉。 何の店なのか気になって見回してみても、周りには看板もなく、窓もないから中の様子がわからない。