……………

三学期は短い。

よって、春休みも短い。


「俺…春休み何してたんだろう…」

ざわついた教室の中で、ポツリと呟く。

「補習受けてたんじゃないの?」

ガタンと椅子を鳴らし、カズが目の前に座った。

髪を切り、ますます爽やかさに磨きをかけたカズをチラリと睨み、はぁとため息をつく。

「俺の貴重な春休み…くそ、ヒロミのやろー…」
「日頃から勉強しとかないから」

昨日発売されたジャンプをパラパラとめくりながら、カズはサラリと言った。

…くそ。頭のいい奴はこれだから。

端正なカズの横顔を一瞬睨んだが、カズの目が一向にジャンプから離れないので、僕はまたため息をつき窓に視線をずらす。


…桜の花びらが、ヒラリと舞うのが見えた。

その行方を目で追うが、すぐに他の花びらに邪魔されて見失う。

去年よりも桜の位置は高く見えていた。
いや、実際高い位置に僕がいるのだ。


見慣れないクラスメート。

去年とは違う外の景色。


気付けば僕たちは、最高学年になっていた。