「雅翔と俺はさ、違うじゃん」
「何が…?」
「身分ってか、立場」
「は?」
「雅翔は次期社長、俺はただのしがない高校生だ」
「だから?俺は咲羅を手放す気はねぇよ」
咲羅の言葉を遮って断言する
俺は咲羅を誰にも渡さない
たとえ咲羅が拒んだとしても
「ずっと…そばにいる?」
「いる」
「す…。そばにいていい?」
「いいよ」
“好きでいてくれる?”と聞くつもりだったんだろうか
それとも“好きでいていい?”だろうか
咲羅は弱い
腕っ節ではなく心が
独りが何より怖い女の子だ
だけど気が強く、誰からも頼られてるから
弱音を吐かない
そんな性格だから椿さんや蘭さん、青葉さんは咲羅を気にかけているんだ
…さすがに溺愛しすぎだけど
「抱き着いていい?」
「言わなくてもいいよ、おいで」
「うん…!」
ふわっと咲羅の匂いがした
今は俺も同じ匂い
抱き着いた衝撃でベッドに倒れ込む
ベッドも咲羅の匂い
服も部屋もなにもかも咲羅の匂い
咲羅に包まれてる感じだ
「大好き…っ」
俺の胸に顔を埋めながら大好きを連呼する
本当に、可愛いな…
背中に回された腕に力がこもる
普通の女子より少し強い力の咲羅
それでも俺にとっては充分弱い
たびたび気遣ってか力を弱める
それが心地いい
「…咲羅?」
いきなり動きが止まる
「…咲羅…。あぁ、なるほど」
寝たのか
「子供みたいだな」
本当に純粋って感じ
俺の服掴んだままだし
起こすのも何だし、俺も寝るか
咲羅を抱き抱えるようにし、電気を消してから布団に入る
一緒の布団…か…
俺の部屋に泊まったとき以来だな
咲羅を壁側にして落ちないようにする
「おやすみ、咲羅」
額にキスを落とし
髪を指で梳く
離さないように抱きしめ、まぶたを下ろした
咲羅の温もりと匂いですぐに眠気が襲ってきて、それからの記憶ははい
久しぶりに休みを満喫できたのは咲羅のおかげだ

