「はぁ……その顔で無自覚って、今まで何もなかったのが奇跡だろ……」



言っている意味がわからなくて、じっと先輩を見つめた。

スッ……と、先輩の綺麗な手が伸びてくる。

その手が、わたしの頬に触れて、ビクッと身体が震えた。


先輩……?



「自分が可愛いってこと、もっと自覚してよ」

「……っ」



冗談で言っているのではないと、瞳を見てわかった。

紅の瞳が、愛おしそうな視線を向けてきて、思わず視線を逸らす。


静かな生徒会室。流れる沈黙が、耐えられない。

心臓の音が、先輩に聞こえちゃうんじゃないかと、そればかり考えていた。

なにか、話さなきゃっ……



「そ、そういう先輩はどうなんですか……!」

「俺?……内緒」



相変わらず、口角の端を上げたまま。
人差し指を唇に当てる先輩に、下唇を噛み締めた。



「ひどい……わたしは言ったのに……」

「杏が俺のこと好きって言ってくれたら、教えてあげる」

「い、言いませんっ……!」



やっぱり、こんな人絶対好きにならないっ……!

少しでも悩んだわたしがバカだった……うぅ。