「そういう杏は?今まで何人くらいと付き合ってきたの?」

「え、わたしですか?」



まさか、聞き返されるとは思っていなくて、首をかしげる。

わたしに恋愛経験なんて、あるわけ無いじゃないですか……!



「ないですよそんなの!恋愛とか、よくわからなかったし……」

「は?」



何故か、驚いた表情を浮かべた先輩に、再び首を傾げて見せた。

何をそんなに、驚いてるの……?



「今まで、一回も付き合ったことないの?」

「……?は、はい」



わたしの返事に、先輩は目を見開いて、黙り込む。



「……やばい」



少しの静寂が流れた後、先輩の口からそんな言葉が溢れた。

やばい?



「そっかー、じゃあ俺が初めてかー」



先輩、何をそんなに喜んでるの……?