「先輩、わたし教室こっちなので……」
上履きに履き替えて、先輩と別れようとしたわたし。
「うん、俺もこっち行く」
「さ、三年生は反対方向ですよね?」
「送っていく」
けれど、何故か、再びわたしの手を握ったわたしは、一年の教室側へ向かって歩き出した。
「け、結構です……」
先輩と歩いてたら、視線が痛いのでっ……!
「いいじゃん。ちょっとでも一緒にいたいし」
「……っ」
にこっと笑顔でそう言われ、言葉を失う。
そんなこと言われると、強く、言えない……。
先輩、ほんとにズルい……。
俯きながら、教室までの道を歩く。
好奇や嫉妬の視線が痛かったけれど、それよりも、心臓がドキドキしっぱなしで、騒がしい。
わたしの倍くらい大きな先輩の手から、伝わる熱。

