【完】愛は溺死レベル



肩身が狭すぎるわたしは、身を縮こめて先輩から視線を逸らす。

あ、あんまり近寄らないでください……と、心の中で呟いた。



「なにあの子、なんで皇さんと親しげなわけ?」

「そういえば、会長に新しい彼女できたって昨日聞いたんだけど」

「ウソ!?そんなのヤダぁ!」



女の子たちが、わたしに聞こえるような声のボリュームで話していて、いやでも耳に入る会話。

どうしよう……今すぐこの場から逃げたい……。

切実にそう思うのに、先輩は上機嫌なようすで、わたしの手を握ってきた。


……っ!


驚くわたしの手を引いて、並んで歩き出す先輩。

ちょ、ちょっと……、こんなところで何して……!



「「「いやぁああ!!!!!!」」」



案の定、女の子たちの悲鳴にも似た声が上がった。



「は、離してください先輩っ……!」



先輩に向けて、小声でそう伝えると、先輩は聞こえないフリをして離そうとしない。