酷い……酷すぎる、こんなの……先輩、最低だっ……。


キスって、そんなに軽い気持ちでしていいものなの……?


悲しい気持ちになって、じわりと涙が溢れる。



「杏……?」



先輩がわたしの名前を呼んだけれど、返事なんてしたくない。

もう、先輩嫌いっ……。



「ごめん。急にキスして……」



……え?

先輩、謝った……?


驚いて顔を上げると、申し訳無さそうにわたしを見つめる先輩がいた。

予想外の行動に、開いた口が塞がらない。


先輩って、絶対謝ったりしなさそうなのに……



「これからはちゃんと、前もって言うから」



……って、絶対悪いと思ってない……!



「い、言ってもダメです……!まず、キスしないでください……っ」

「それは無理。約束できない」



真顔でキッパリとそう言い切った先輩に、溜息を吐きたくなった。