「そんな冗談……からかわないで、ください……」
「からかってないって。ほんと」
その言葉に、わたしはなにも言えなくなってしまって、下を向いた。
顔の熱が、全然引かない……っ。
「杏、落ち着いた?」
「……え?」
「さっきまで、震えてたから」
そういえば……。
先ほどまで、足が竦んでしまうほどだったのに……もう、恐怖なんてどこかへ吹っ飛んでしまった。
「もう怖くない?」
顔色を伺うように、わたしをじっと見つめる先輩。
気遣ってくれる優しさに、キュンっと音を立てる心臓。
いじわるなこと言ったり、急に好きとか言ったり、心配してくれたり……
もう、わたしの心臓、うるさい。
黙ったまま、こくりと頷いた。
そんなわたしに、先輩はにっこりと微笑む。