わたしを抱っこしたまま、シアターを出てすぐにあるソファに座った先輩。
上映中のためか、周りには人がいなくて、情けない姿を晒すことにならなくてよかった……。
うっ……それにしても、怖かったっ……。
あ、あんなに、目を背けたくなっちゃう映像が、続くなんて……うぅ。
「ご、ごめんなさい……」
「え?なにが?」
「チケット代、無駄にしちゃって……」
せっかく、映画館に来て、しかもウソでもわたしが観たいって言い出したのに……。
「ふっ、そんなこと気にしなくていいのに」
「でも……」
「それに、こうして杏に抱きついてもらえて、俺としては願ったり叶ったりだけどね」
……なっ……!
慌てて、先輩から離れた。
そ、そうだわたし、当たり前みたいにしがみついてたけどっ……