隣の先輩が、にやりと口角の端を上げて、わたしを見てくる。
こ、この人……まさか確信犯っ……!?
「す、好きですよっ……!」
今更ウソでしただなんて言えない……っ。
大丈夫、1時間と少しの我慢……。
『うぁああああ!!』
「ひゃぁっ……!」
あまりに怖い映像と断末魔に、声を上げてしまった。
む、無理っ……やっぱり無理っ……。
自分の手で耳を塞いで、音の侵入を遮断する。
キツく瞼を閉ざし、ぎゅっと目を瞑った。
怖い……変なウソ、吐くんじゃなかった……っ。
「杏」
耳元で囁かれた声が、手をすり抜けて、かろうじて耳に入る。
「ぅっ、……っ!?」
「大丈夫。おいで」
せん、ぱい……?
ぎゅうっと、温かいものに包まれた。
恐怖で思考回路の働きが間々なっていない中、先輩に抱きしめられているのだと理解する。

