運転手さんに、車を停めるよう指示を出す先輩。
車はゆっくりと停車し、先輩はわたしの手を取って、車内から降りた。
えっ、えっ……?
スタスタと、映画観に入っていく先輩。
「どれ観たい?」
チケット購入前の公開中映画一覧と書かれた場所で、先輩はわたしの方を見た。
「い、いいです……!見ません!帰りますっ……!」
「いいじゃん。俺も久しぶりに映画観たいし、どれ?」
も、もう、この人暴君すぎる……。
ダメだ、こっちが折れないと、絶対に折れてくれなさそう……。
せっかくだし、映画だけ見て帰ろう……。
………あ。
そうだ……良いこと、思いついた……!
「先輩、わたしこれ観たいです」
とあるポスターを指差して、わたしはそう言った。

