【完】愛は溺死レベル




どこへ向かっているのかわからない車に揺られながら、唇を尖らせる。



「杏はわがままだなぁ……」

「せ、先輩が勝手すぎるんですっ……!」



強引すぎるにも、ほどがあるよっ……!


フンッと先輩から目を背けて、車窓を眺めていると、あるポスターが目に入った。



「あっ……」



あの映画、公開始まったんだ……。

見たいと思っていた、ラブストーリーの宣伝ポスター。

ちょうど今日から公開開始らしく、見つめ合うカップルが写ったポスターをぼうっと眺めた。



「なに、映画みたいの?」



そんなに凝視してしまっていたのか、先輩が、不思議そうに聞いてくる。

わたしは、慌てて首を振った。



「ち、違いますっ……!」

「ふーん。……あ、そこに停めて」

「せ、先輩っ……?」