【完】愛は溺死レベル



白で統一された、広々とした車内に、わたしは開いた口が塞がらなかった。


先輩……お金持ちの、息子さんなんだっ……!


ソファに座らさせられたわたしは、キョロキョロと車内を見渡した。

す、凄い……座り心地も凄くいい……ほんとに、こんな車あるんだぁ……。



……って、そうじゃなくて!

わたし、なに平然と車に乗せられてるの……!


か、帰るつもりだったのに……うぅ。




「杏、どこ行きたい?」



デートをする気満々なのか、隣に座る先輩が、笑顔で聞いてくる。



「行きたいところなんて、ないです……」

「えー?デートしたいって言ったの杏でしょ」

「い、言ってないです……!わたしはただ、付き合うとかそういうのは、恋愛を経て始めた方がいいって言っただけで……」



というより、まず先輩とお付き合いするつもりもありませんっ……!