【完】愛は溺死レベル


……?



「つまり君は……俺とライバルになるってこと?」



ライ、バル?

先輩と翔くん、が?


一体、なんのライバル……?



「…………はい。そうとっていただいて構いません」


「ふーん……なるほどね」



な、何がなるほどなの?

わかってないの、わたしだけ……?


一人置いてけぼりの私は、二人を交互に見つめた。

すると、突然先輩に腕を掴まれ、先輩の方へ引き寄せられる。


あっという間に抱きしめられて、わたしは先輩の腕の中。


女の子たちの、「「「きゃあああー!!」」」という悲鳴が上がった。


な、なっ……なんでっ……!

どうしてわたし、抱きしめられてるのーっ……!



「渡さないよ、杏は」



先輩ってば、何言って……!



「この子は俺の。君の出る幕はない。……じゃーね」



先輩の珍行動に、頭がついていかない。

もう頭の中は軽いパニック状態だと言うのに、先輩はわたしのことなんて御構い無し。

わたしの手を握って、教室を出ようと歩き出す始末。



「ちょっと!まだ話は終わって……!」

「杏、行こ」



翔くんの言葉を無視して、わたしに微笑んでくる先輩。



「え、せ、先輩っ……どこに……っ」

「言ったでしょ。デート。行くよ」

「えぇっ……!?」



ほ、ほんとに行くつもりなのっ……!?



繋がれた手を振りほどく力も無く、わたしは先輩のされるがまま、引きずられるようにして付いて行った。