【完】愛は溺死レベル


わたしはというと、ぽかんと間抜けな表情をしながら、教室の後ろ扉を見ていた。


く、来るのが、早すぎますっ……。


窓にもたれかかりながら、笑顔でわたしに手を振ってくる先輩。

わたしの逃走計画は、実行する前から失敗が決まった。



「それでは、さようなら。みんな気をつけて帰るように」



先生の言葉に、みんなぞろぞろと席を立ち上がって教室を出て行く。

わたしは、いつもより重く感じる鞄を肩にかけながら、大人しく先輩の元へと歩いた。

こうなればもう……直接お断りするしかない。



「杏、迎えに来たよ」



先輩の笑顔に、思わず視線を下げる。



「えっと、あの……「すみません」



……え?



「嫌がってるんじゃないですか?」



翔、くん?

背後から、スッと現れて、わたしと先輩の間に入ってくれた翔くん。

助けて、くれたの……?