「否定しないんだ。……はっ、なにそれ。杏、可愛いのも大概にしろって。これ以上俺を夢中にさせてどうする気なの?」
余裕無さげに、掠れた声でそういった先輩。
そのまま強引に唇を奪われて、わたしは必死にそれに応えた。
「杏って、なんでそんな可愛いの?こういう時に素直に甘えてくるのもほんと反則。俺が杏に飽きるなんて、ほんとに思ってんの?」
「……だって……先輩、すっごくかっこいいし……大学いったら、綺麗な女の人とも、出会うだろうし……」
「……あのさ、急に敬語じゃなくなんのも、相当心臓に悪いから。あー、くそ可愛い。そんなこと心配してたなんて、杏はほんとかわいい」
すっ……と溢れたわたしの涙を、あろうことか先輩は、ぺろりと舐めとってきた。

