先輩は、自分が着ていたブレザーを脱いで、わたしにかけてくれた。



「とりあえず俺のブレザー羽織って」



先輩の温もりに包まれて、なんだか抱きしめられているような気分になる。



「えへへ……先輩の匂いがします」



そんな言葉が口から漏れて、先輩は何やらじっとわたしを見つめてきた。



「……杏」

「?」

「お前もうほんと……知らないから」



……え?