「…………はぁ……杏さぁ……」 先輩が、スマホを置いて、溜息を吐く。 唐突に腕を引き剥がされて、拒否されたのだと悲しくなったら、次の瞬間優しく抱きしめられた。 「なにかわいいことしてんの?」 恐る恐る先輩の顔を見ると、その表情は、いつもの優しい先輩で、涙が溢れた。 「何か言いたいことは?」 「……」 「杏、言わなきゃわからないでしょ?」 いつもの優しく絆すような言い方に、自然と口が開いてしまう。 先輩は……ズルい。