「んー……そうだな」
先輩は、悩む仕草をした後、わたしの方を見た。
「ねぇ、杏。いい?」
「……え?」
「俺、この女と付き合ってもいい?」
……なんで……そんなこと、聞くの……?
笑顔で言ってくる先輩の、意図がわからなかった。
意地悪なんていう、レベルじゃない。
「あーん、聞いてるんだけど」
この人の顔が、悪魔に見えた。
「……ね、答えて」
わたしの顔を覗き込み、楽しそうに聞いてくる先輩。
わたしはスカートの裾を握り、涙が出そうなのを必死に堪えた。
「先輩が……そうしたいなら……」
口から出たのは、そんな言葉。

