【完】愛は溺死レベル




だ、抱っこ!

や、やだ!恥かしいよ…!



もう一体、さっきから何が起こっているのやら。


会長さんは私を抱っこしたまま、何処かへ向かい出す始末。




「お、降ろしてくださいっ……」

「だーめ、逃がしてあげない」



ジタバタ抵抗しても、会長さんは楽しそうに口角を上げるだけ。




まるで、嫌がっている私の姿を楽しんでいるようで…。


会長さん目当てで集まった女の子たちや何故か急速に集まり始めたギャラリーを掻き分けながら、歩く足を止めない会長さん。


この場にいる全ての人の視線を集めている、と言っても過言ではない状況に、居た堪れなくなって会長さんの肩に顔を埋めた。

それは、少しでも顔を見られたくないという一心からだったのに…



「なーに可愛いことしてんの?」

「な、何言ってるんですかっ」

「杏も早く二人きりになりたいの?じゃ、ちょっと急ごっか?」



勝手に話を進める会長さんに反論しようと思ったけれど、私は一つ引っ掛かったことがあり、目を点にする。

杏って…言った?